【クリエイターインタビューvol.52】『TAIWANBAG』GOB

【クリエイターインタビューvol.50】『てのなかの宇宙 vol.2 百丈の野狐ズ』池田翔平

  【クリエイターインタビューvol.50】

8月20日から8月25日まで開催中の池田翔平さんによる
『てのなかの宇宙 vol.2 百丈の野狐ズ』
          
紙とペンによるさまざまな生き物のドローイングが並びます。
昨年に続き第2弾となった展示についてお話を伺いました。



自己紹介と普段の活動を教えてください。


普段は、文化振興の仕事をしながら制作を続けています。今回のシリーズ「手のなかの宇宙」は、自分の個展の中のドローイング部門として設定しています。



紙とペンのみでのドローイングはいつごろから続けておられるのですか?


言葉と絵によるメモのようなドローイングは以前から描いていたのですが、徐々に作品化してきたのかなと感じはじめたのは、昨年に展示しました「手のなかの宇宙 ボールペンで辞書を書く」あたりからなのかなと思っています。


昨年、展示させていただきましたドローイングは3周目で、当初のドローイングは、国語辞典を引いてはいけない、一番最初に脳内に浮かんだものを必ず描かなければいけない、一つの文字について一枚しか描いてはいけないなど、とても制約重視でトレーニング性の強いものだったのですが、進めていくうちに最終的な形を重視するようになり、言語がつくる世界の中で「わたしのなかの辞書」を、世界にあるたくさんの辞書のうちの一つの辞書として提示することを作品としてとらえるようになっていきました。






本展のテーマやコンセプトをお聞かせください。


「手のなかの宇宙」というシリーズのコンセプトのうちの一つは、紙とボールペンやマジックによって「立ち戻れない状況を作る」ということです。


戻れない状況を切り抜けるときに、新しい発見とか、自分の中に潜んでいた視点とか、いろんな面白いものが出てくるのではないかと考えています。


ですが、毎回とても困っています。





前回の展示では「あ」から「ん」まで絵による辞書を展示されていましたが、今回生き物に着目されたきっかけは何かあったのでしょうか?


前回の辞書の作品を見るうちに、生き物部分を広げてみようと思い立ちました。それで単純に「辞書」の次は「図鑑」なのかなと思いました。


「Vol.2 百丈の野狐ズ」のタイトルは禅のお話からとりました。


言語と記号と図像の汽水域でずっともがいている自分を、動物の一部として喩えるような自嘲的な意味合いを持たせています



辞書や図鑑などには昔から興味を持たれていたのでしょうか?


辞書や図鑑が好きという側面と、作品の経緯にトレーニング的な要素が強かったため網羅的に進めることで負荷をかけているような側面があります。





今回の展示で特に思い入れの強い作品はございますか?


模造紙にマジックで描いた「カバ」かもしれないですね。以前、この手の制作に何度か挑戦したことがあったのですが、挫折しました。途中で破綻してしまったためです。


今から考えれば、マジックで描くことのじれったさに耐えられなかったのかなと思います。





絵を描かれることでご自身の無意識を浮かび上がらせることを試みておられると伺い、興味深いアプローチだと感じました。制作される中でどのような気づきや発見がありますか?


一つは、人間の考えることってそのままではそれほど広大ではないのではないか、ということです。僕自身はそういうことの拡大をおそれているようなところもあるので、この予兆は自分に安心を与えてくれるかもしれないという気がしています。





今回は抽象的な作品も展示されていますが、こちらはどのように着想されたのでしょうか?


今回のDMは、このような状況でしたので「アマビエ」を選んだのですが、生き物図鑑を描くうちに蓄積されたものを使って、キメラ的なものに派生していけるのかなと思い立ちました。



最後に、今後の予定や目標もぜひお聞かせください。


最終的な目標は、すべての制作を終えることです。制作を続けていきますというより、なかなか終わらないという方が近いのではないかと思っています。





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池田翔平『てのなかの宇宙 vol.2 百丈の野狐ズ』


8月20日(木)~8月25日(火)
10:30~18:30/レトロ印刷JAM