【クリエイターインタビューvol.52】『TAIWANBAG』GOB

【クリエイターインタビューvol.40】「ぼくのおじさん展」

【クリエイターインタビューvol.40

12月12日(木)から始まりました、arkibito「ぼくのおじさん展」。
たくさんの"おじさん"たちの肖像が、作者の愛情滲み出る、情熱的なその"おじさん"のレビュー付きで並びます。
どこにいても"おじさん"の視線にさらされるような、そんな展示を味わいに足をお運びください。




自己紹介と普段の活動をお願いします。
はじめましてarkibito(あるきびと)と申します。普段は某雑誌の編集を生業としておりまして、全然、絵描きでもイラストレーターでもないただのフツーのおじさんです。
表現したり、イメージしたり、ものづくりが大好きで、若い頃から、音楽をしたり、絵を描いたり、映画を作ったり、あくまで趣味の範囲ですが色々やってきました。
モットーは「マジメにアソブ、マジメをアソブ」。

今回の展示のタイトルの由来やコンセプトをお教え願います。
今回の作品展の主役はズバリ”おじさん”です。僕がめぐり合った愛すべきおじさんたちに、
感謝と敬意を表すために描いた似顔絵をこっそりお披露目するというのが今回のコンセプトです。
と、もっともらしいことを言っていますが、実は、基本的におじさんしか描けないんです。なんでだろう?
そういうことで、作品展のタイトルもそのまんま『ぼくのおじさん展』としました。
映画好きの方なら気付いていただけるかもしれませんが、このタイトル、
実は大好きなジャック・タチ監督の映画へのオマージュでもあるんです。

今回の製作で意識されたことはありますか?
普段、たくさんの人に作品を見てもらうという機会がないので、展示の方法についてものすごく考えました。
せっかくこれだけ大きな空間で展示させてもらえるのだから、それをうまく生かすにはどうしたらよいだろうか、忙しい年の瀬にわざわざ中津まで足を運んで見に来てくださる人が面白かった楽しかったと満足していただけるにはどうしたらいいだろうと、何度もレトロ印刷に通っては、あれやこれやと頭を悩ませました。
コンセプトとしては、京都のお寺の龍の天井画ではないですが、スペースのどこにいてもおじさんの視線に見つめられているような、そんな迫力を感じれもらえればと思います。



似顔絵を描き始めたきっかけはなんですか?
実は絵はずっと苦手意識があって、特に人の顔なんて絶対無理!だったんです。
ところが数年前に、酒場詩人・吉田類さんの人気番組で、はがきで似顔絵コンテストというのがあり、そこに家族みんなで応募しようということで、はじめて似顔絵を描いたのがきっかけです。
その後ご縁があって、ご本人と仲良くさせていただき、絵を褒めていただいて、
そこから似顔絵を描くことがライフワークのようになっていきました。
なので類さんは自分にとっては絵の恩人です。
特別な人とお会いする機会がある時には、敬意と感謝をお伝えする意味を込めて、手土産に似顔絵やお手製のグッズをお渡しすることがお決まりとなっています。
ある時、デビュー以来ずっと大好きで追い続けているクラムボンのお三方に直接絵をプレゼントできる機会があったのですが、大変気に入っていただいて、
なんとCDのジャケットやグッズのデザインに使っていただくという漫画みたいな奇跡が起こってしまいました。
(しかも、おじさんじゃないのに、なぜだか郁子ちゃんだけは描けたんです)
自分のつたない絵が、応援している人のささやかな力になれるということがとてもうれしくて、これからもひっそりではありますが続けていこうと思っています。

似顔絵のモデルの選定はどのようにされていますか?
近々お会いする機会のある人や、自分の生活の中で話題に上がりぜひ描いてみたいとなった人を順番に描いています。自分の興味の分野(特に音楽)の人や実際にお世話になった人が多いですね。
その人にまつわる様々な思い出を思い浮かべたり、お渡しする際に何をお話ししようかなどと空想しながら描いています。
描く動機がそういう風なので、全く知らない人はどう描いてよいかわかりません。



描いた似顔絵はできあがったらどうしておられるのでしょう。
鉛筆だけで描いた原画は、一度それをデータとして取り込んだうえで、その人にピッタリなフレーズを添えて完成します。
絵と同じくらい、そこに添える言葉も大切な作品の一部です。
完成したものをレトロ印刷に持ち込んでシルクスクリーンの版を作ってもらい、それをキャンバスにスリマッカしたり、Tシャツ等のグッズにしたものを、ご本人に直接プレゼントしています。
今春、長年憧れつづけている細野さんと松本さんにプレゼントさせていただいた時は、さすがに畏れ多くて手が震えました。

似顔絵以外の創作活動があれば、お教えください。
音楽活動(ギターの弾き語り)はずっと続けています。
といっても、相当な集中力と時間を必要とするので、もう2,3年ほどオリジナル曲を作れておらず、最近はもっぱら大好きなアーティストのカバーを弾いています。そろそろそちらも再開したいなあ。





以前からJAMをご利用頂いていますが、JAMとはどうやって出会われましたか?
何年か前の「紙のマーケット」にお邪魔したのが最初だったと思います。
それ以来、ものづくり大好き一家としては、わが家の工作室みたいな感じで頻繁に利用させていただいています。
半袖サミットの時に、しんご君の似顔絵を描かせていただいて、そこからスタッフの皆さんとぐっとお近づきになりました。
スリマッカの版にするには細かすぎて難儀な絵を、いつも適切に処理してくださってありがとうございます!

いくつからが「おじさん」ですか?
いくつからなんでしょう?少なくとも僕はれっきとしたおじさんです(笑)。
僕がたまたまおじさんしか描けないということでタイトルに使っている言葉ですが、
ここでいう「おじさん」は、中年の男性という意味ではなくて、
例えば親戚のおじさんとか、小学生の登下校を見守る近所の親切なおじさんとか、家族や親友というほどまで近くはないけれど、全然無関係ということでもなく、ずっと周辺で見守っていてくれたり、自分の人生に少なからず影響を与えてくれるような存在を、親しみを込めて呼ぶ言葉として使っています。





丁寧なキャッチコピーをおひとりづつにつけていらっしゃいますが、
どんな時にどうやって考えておられるのですか?
例えば職業や身分を名前と一緒に添えても、それは単に肩書や社会的立場を説明しているだけのことなので、その人の芯の部分までは到底捉えきれず、もっとその人にピッタリの言葉があるんじゃないかと考えるようになりました。
それはニックネームを付けるなんていうおこがましいものではなくて、ささやかな感謝のメダルを絵に添えるといった具合なのですが、あまりあれこれ思案するのではなく、意外とすんなりイメージ通りの言葉が浮かんできます。
言葉としてアウトプットすることで、自分がその人についてどう感じているのかというのを再認識できます。
言葉と向き合うことはとても大切で、言葉の豊かさこそ、人としての豊かさにつながると、松本さんをはじめ素敵なおじさん達に常に教えていただいています。

最後に、今後の予定や目標をお聞かせ願います。
いろんな人から、どうせなら絵を副業にして稼いだり、グッズをバンバン作って売っちゃえば?とアドバイスをいただきます。それはきっと自分の絵を認めてくださっての言葉なのでとってもありがたいのですが、もともと似顔絵を始めたきっかけが、その相手に感謝と敬意をお贈りするというところから出発していることもあるし、なにより絵を描くということが、決して金銭的価値に縛られることのない自由のままでありたいなあと思っているので、これからも細々と絵を描き続けて、似顔絵を通じて色々な人と出会ったり、心を通わせたりできたらいいなあと思います。
そして時々こうやって皆さんの目に触れられる機会が設けられたと思っています。それが自分にとっての大きな財産となります。
あ、でもでも、もし面白い企画やご依頼があれば、ぜひチャレンジしてみたいのでお気軽にご連絡くださいませ。当面の目標は、女の人を描けるようになりたい!!(笑)


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「ぼくのおじさん展」
arkibito

12月12日(木)~12月17日(火)
10:00~19:00/レトロ印刷JAM